退職して作った小さなSaaSが月3万ドルに。個人開発者が収益を伸ばす仕組みを読み解く

退職して作った小さなSaaSが月3万ドルに。個人開発者が収益を伸ばす仕組みを読み解く

ニュースの概要

起業家の成功事例を紹介するメディアStarter Storyが、会社を辞めてマイクロSaaSを立ち上げ、月に約3万ドルの売上を得るに至った創業者の事例を取り上げた。マイクロSaaSとは、ごく狭い用途に絞った小規模なクラウド型ソフトのことで、一人や少人数でも運営できる点が特徴だ。大きな資金調達に頼らず、限られた顧客層の困りごとを確実に解決し、月額課金の収益を積み上げていく。今回の話は、退職という大きな決断の先にどんな稼ぎ方があり得るのかを示す一例といえる。なお、ここでの月3万ドルは売上の規模を指す数字であり、利益そのものではない点には注意が必要だ。

引用元: 仕事を辞めてこのマイクロSaaSを作った。今では月3万ドルを稼ぐ|Starter Story(BigGo ファイナンス)

分析・見解

月3万ドルは大成功というより給与を置き換える水準

月3万ドルは、為替にもよるが日本円で四百五十万円前後になる。年にすれば五千万円を超える計算だ。ただし、これは売上であり利益ではない。広告費、決済手数料、サーバー代、外注費が引かれる。SaaSは原価が低いため、粗利が八割を超えることも珍しくない。それでも税や社会保険を考えれば、手取りはずっと小さくなる。

それでも意味は大きい。会社員の給与を置き換えるには十分で、しかも一人で到達できる水準だからだ。個人で生活を支えられる最低ラインを越えた点に、この事例の価値がある。

狭い悩みに絞るほど、価格競争から逃げやすい

マイクロSaaSの強みは、巨大企業が手を出さない狭い市場にある。たとえば「歯科医院の予約確認を自動化する」「動画編集者の請求書だけを作る」といった用途だ。市場が小さいので大手は参入しにくい。一方、顧客にとっては毎月の手間を確実に減らす道具になる。月額50〜100ドルでも解約されにくい。

類似の例として、メール配信、予約管理、フォーム作成といった小型サービスがある。多くは一人か二人で運営され、数百社の顧客から安定した収益を得ている。月額100ドルなら300社で月3万ドルに届く。この数字は、思ったより現実的だ。

AIとノーコードが「作る」コストを大きく下げた

以前は、独立を志す人がまず開発の壁にぶつかった。今はAIによるコード補助や、プログラムを書かずに作れる道具(=ノーコード)のおかげで、試作品なら数日で形になる。差がつくのは作る速さではなく、誰のどんな悩みを解くかを見つける力である。

この変化は両刃だ。参入しやすくなる一方、似たサービスも増え、模倣もされやすい。だから顧客との対話、導入の手伝い、業界特有のデータの蓄積といった、真似しにくい部分が堀(=競合から身を守る強み)になる。

成功談の裏に隠れた、挑戦して消えた人たちの存在

Starter Storyのような事例集は、成功した人を取り上げる。同じ挑戦をして月数百ドルで止まった人は、記事にならない。月1000ドルに届かないまま終わる例も珍しくない。退職というリスクの取り方も、貯金や家族の状況で大きく違う。

だから読むべきは金額ではなく、再現できる手順である。副業で小さく試し、最初の有料顧客を得てから独立する。この順番を踏んだかどうかが、事例を自分に当てはめるときの分かれ目になる。

ビジネスへの影響

独立を考える個人は、辞める前に三つの数字を確かめる

退職前に確認したい数字は三つある。一つ目は、有料で使ってくれた顧客の数だ。無料の登録者数ではなく、実際に支払った人の数を見る。二つ目は、毎月の解約率である。月に5%を超えるなら、穴の開いたバケツに水を注いでいるのと同じ状態だ。三つ目は、生活費の何か月分の貯えがあるかである。目安は十二か月から十八か月だ。

副業で月1000ドルを半年続けられたなら、独立を検討する材料になる。逆に無料利用者ばかりなら、まだ早い。

企業は小さな専門サービスの「買い手」にも「作り手」にもなれる

買う側として見ると、マイクロSaaSは大型の業務システムより安く、必要な機能だけを導入できる利点がある。ただし運営者が一人の場合、突然の終了や対応の遅れという危険がある。契約前に、データの書き出し方法とサービス終了時の扱いを確認しておきたい。

作る側としては、社内の特定業務で使っている道具を外部向けに切り出す道がある。新規事業として小さく試せ、失敗しても損失が限られる。担当者を一、二名つけ、六か月で有料顧客十社といった撤退の基準を先に決めて始めるとよい。

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